短編 風の町

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風の町 駅

2018年01月24日

日本海を渡ってきた湿った冷たい風は、東北から北陸に二十年ぶりの大雪をもたらした。しかし、その年の冬も私の故郷には乾いた風だけが吹いた。

風の町 バス

2018年01月23日

私と老婆を乗せたバスは、シャッター街になった駅前通りを抜け、県道を北に向かって走っていく。老婆は烏川にかかる橋の傍にあるバス停で降りていった。昭和の頃、M町に住む誰もがこのバスを使ったが、車の所有者が増えると利用客は減った。十年前、バス会社は廃止を決めたが、町民の強い存続希望があり、運用費用のほとんどを町が負担することでバス路線は残った。今でも田んぼの中に「バスを使おう、バスを残そう」という字の消えかけている古い大きな看板が立っている。しかし存続運動から三年もすると、殆どの町民はバスを使わなくなった。

風の町 母

2018年01月22日

都内の製薬会社に就職すると、生まれた町は更に遠くなった。母だけでなく町の同級生も、私が地元に戻ると思っていたが、もう私の心からM町は消えかけていた。私は年に二回か三回しかM町には帰らなかった。私は東京の生活に染まり、やがて、会社の後輩で東京育ちの敬子と知り合った。敬子のことを母に告げたが、母は「お前が気に入ったのなら、いいんよ。でも母ちゃんはその人には会いたくない」と言った。私は母の気持ちを振り切って東京で所帯を持った。私は敬子を一回だけM町に連れて帰ったが、敬子は何もない町を見て「本当に何もないのね」と言った。母は敬子を生家には入れなかった。もともと人付き合いが下手だったし、貧相な家の中を都会の嫁に見せたくなかったのであろう。今思えば、敬子が私から去っていくことを、母は直感的に感じて...

つづく  風の町 同窓会

プロフィール

藤村 邦 

星の息子ーサバイバーギルト

Afterglowー最後の輝き

(群馬県文学賞受賞)


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